その歴史はとても長く、明治・大正の近代登山ブームや、アルペンルートが
できる遥か昔から人々に信仰され、修験者たちの修行の場でもありました。
その立山信仰を今に伝える『石仏』を、一部ご紹介します。
立山高原バスに乗っていると、道路沿いのところどころに石仏があるのを
ご覧になられた方もいらっしゃると思います。
これらは『立山参道の石塔ならびに石仏群』として、富山県指定の有形民俗文化財に
指定されており、「西国三十三番札所観世音菩薩霊場」の分霊像は
岩峅寺から室堂に至る、俗に十里半(約42キロ)といわれる立山参道沿いに
奉納安置されていました。
分かれ道や難所などにも建てられており、登山道の距離を示す「里程標」、
方向、コースを示す「道標」でもありました。
石仏は最上部が「宝珠」、その下に「笠」、観音を浮き彫りにした「塔身」、
更に番号などを刻んだ「基礎」からなり、単なる石仏ではなく、
土中にお経などを埋めた塚の上に建てられる「笠塔婆」ではないか?
とも言われています。
天狗平山荘の近くにある、立像 千手観音 |
多くに文化八年(1811)の年号が刻まれ、江戸や尾張など各地からの寄進を
示す銘文を見ることができ、この石仏を調査することによって、
建立当時の立山登山道がどこにあったのかを知る手がかりにもなります。
その立山信仰を今に伝える『石仏』を、一部ご紹介します!
第十七番観音は、美女平駅前の園地にあります。
立像 十一面観音 第十七番札所 山城国六波羅蜜寺 |
第二三番観音は、八郎坂を登りきり、高原バス道路に出た少し先にあります。
右:立像 十一面観音 第二三番札所 攝津国勝尾寺 |
「西国三十三番札所」の石仏ではありませんが…。
立山高原バス弘法バス停の近くに「弘法大師倚子懸像」があります。
第二六番観音は、追分にあります。
仏像を刻んだ部分が割れて失われており、全体像は不明です。
左の地蔵菩薩像には「右 うばがふところ道 左 一の谷道」と刻まれています。
弥陀ヶ原から松尾峠に向かう際、高原バス道路を横断するところを、
美女平側に少し下ったところにあります。
右:立像 聖観音 第二六番札所 播磨国一乗寺 左:地蔵菩薩像 |
第二八番観音は、弥陀ヶ原バス停から室堂方面へ
少し登ったところにあります。元は姥石付近にあったそうです。
立像 聖観音 第二八番札所 丹後国成相寺 |
第二九番観音は、鏡石平にあります。元は鏡石の脇にあったそうです。
写真中央上に「鏡石」があります。 |
立像 馬頭観音 第二九番札所 丹後国松尾寺 |
第三〇番観音は、天狗平山荘から室堂側へ木道を歩き、
高原バス道路を渡る手前右にあります。元は大谷の上にあったそうです。
立像 千手観音 第三〇番札所 近江国宝巌寺 |
笠の部分に何か書いてありますね。 |
第三二番観音は、立山室堂の近くにあります。
左は「奥州仙台」座銘の梵字六字名号石標です。
立像 千手観音 第三二番札所 近江国観音正寺 |
そのほかにも立山室堂周辺ではたくさんの石仏、石造物をご覧いただけます。
保存堂には「十六羅漢」や「地蔵菩薩」が納められています。 |
「西国三十三番札所」の分霊像は、いまだに行方不明の石仏があるそうです。
行方不明だった三十三番目の石仏は、1993年に現在の登山道から外れた場所で発見されました。
「まだこの山のどこかに行方不明の石仏があるのでは…?」と思うと、
ワクワクしますね♪
立山町のHPより、「立山町石造物マップ」を参考にさせていただきました。
れいり