(立山カルデラ砂防体験学習会*前編のブログはこちらから。)
千寿ヶ原にある立山砂防事務所からトロッコに乗り、水谷平に到着。
水谷でお昼休憩の後は、水谷連絡所のそばにあるトンネルを歩いて抜けて、
白岩砂防堰堤の見学へ。
トンネルを抜けると、そばにもうひとつトンネルがあり、堰堤の岩盤の補強工事の
裏側を見学できます。
急峻な地形と、景観を維持するため、岩盤内に2つのトンネルを掘り、
そのトンネルから岩盤表面に向かって、線状のアンカーとケーブルボルトを889本
取り付け、亀裂が多い表層部を引っ張るという工法を採用しています。
この工法は、栃木県・日光にある「華厳の滝」の岩盤補強工事と同じ工法だそう。
このたくさんのアンカーが、岩盤表層部を引っ張って、 崩れないように固定しています! |
こちらで足湯に入らせていただき、ここからはバスに乗り、見学ポイントを
回ります。
まずは、国の重要文化財『白岩砂防堰堤』を見学します。
白岩砂防堰堤は、昭和14年に完成。
主堰堤の高さは63m、長さ76mあり、7基の副堰堤を合わせると落差が108m。
日本一の落差になります。
上から見下ろすと結構高いです…。 |
砂防ダムがあることによって、一時的に土砂を貯めて川底のけずれや川岸の崩れを
ふせぎ、川幅が広がり、堰堤を何段にもすることで、水の流れが緩やかになります。
その結果、下流の流れも穏やかになり、氾濫の心配が少なくなります。
また、この白岩砂防堰堤は、下流にある北陸電力・真川発電所の取水口でも
あります。
白岩砂防堰堤近くにあるインクライン跡。 林道ができるまでは、これで工事用車両を上げていました。 |
再度バスに乗って『六九谷(ろっきゅうだに)展望台』へ。
下の写真右の黄色で囲ってある場所に私たちはいます。
ここは昭和44年(1969年)8月に豪雨で崩れた谷。
発生した年から、場所の名前が名づけられました。
カルデラ全体を眺めることができる場所ということですが、
ガスで展望がなく、堰堤が一つ見えるのみ…😢
晴れていれば、このような展望が見えるようです。
↓ ↓ ↓
更にバスに乗り『多枝原(だしわら)平』へ。
幸田文さんの「崩れ」の文学碑の先に、大鳶、小鳶の崩れ跡が見れるのですが、こちらもガスに覆われて見えず…😢
この「崩れ」が見えるはずだったのですが…。 |
途中、バスは『泥谷砂防堰堤』の前で一旦停車。
1906年(明治39年)富山県は浸食の激しい泥谷から砂防工事に着手しました。
この場所が立山カルデラ砂防工事の始まりの場所です!
先日、国の文化審議会が、この泥谷砂防堰堤と本宮砂防堰堤を
重要文化財に指定するよう答申したというニュースもありました。
その草木が根を張ると、山腹はもっとくずれにくくなり、山はさらに安定します。
森林の育成も、砂防の仕事のひとつなのです。
この泥谷砂防堰堤で、その一部を見ることができます。
次は『立山温泉跡地』を見学します。
大鳶山が崩れた際に亡くなった方の慰霊塔 |
『天涯の橋』を渡り、泥鰌(どじょう)池へ 橋から、お湯が湧き出ている場所が見えます。 |
こちらも葉の色が変わってきていますね。 |
マユミ |
ヤマウルシ |
木道のつきあたりにあるのが『泥鰌池』。
立山温泉が営業していた当時、ここにボートを浮かべたり、砂遊びをしていた場所だそうです。
ガスで対岸の景色は見えませんでしたが、池の奥にある斜面の上が松尾峠です。
以前は、ここから室堂へ向かう登山道もありました。
来た道をもどり、『立山温泉跡地』へ。
温泉は1580年(!)に発見されたと伝えられています。
立山信仰の拠点になったということもあり、江戸時代は大変賑わったと
いわれています。
昔から日本には『登山と温泉』の文化があったのですね~♪
砂防工事の事務所も初めはこの地にありました。
1969年(昭和44年)の大雨で登山道が流され、1973年(昭和48年)に閉鎖。
1979年(昭和54年)に建物が焼却されました。
皆さんが立っているところが、男湯の跡。 よく見ると、かわいいタイル張りの床です。 |
こちらは女湯の跡。 |
見学コースには入っていなかったのですが、『天涯の水』の場所に立ち寄っていただきました。
ボーリング調査をしたところ、水が湧き出てきた場所だそうです。
バスから『跡津川断層』が出ている場所(写真中央)も見学。
1858年の飛越地震はこの断層によるもので、立山連峰では鳶山崩れ(大鳶崩れ)が発生し、立山カルデラ内に大量の土砂が流れ込み、堰止め湖ができました。
余震と周辺の誘発地震によって常願寺川は2度決壊し、下流の平野部に大きな被害をもたらしました。
有峰林道真川線を抜けて、有峰湖へ。
有峰湖は北陸電力の水力発電のダム湖です。黒部ダムと同等の2億立方メートルの貯水量があります。
有峰湖周辺の紅葉はそろそろ見頃かもしれません。 |
最後に『本宮砂防堰堤』をバスから見学し、立山カルデラ砂防博物館に戻り、
ツアーは終了です。
戦前に建てられた堰堤が今でも機能し、土砂災害から街や人々の暮らしを
守っていることに、日本の土木技術のすごさを感じました。
また機会があれば、違うコースに参加してみたいと思います♪
今年度の立山カルデラ砂防体験学習会は、すでに募集が終了していますが、
募集要項、参加コース等、ご参考までにこちらをご覧下さい。
れいり